ACTA+ JOURNEY
【インタビュー記事】いけばなをアートに再構築する。大薗彩芳さんが挑む、新たな表現のかたち
いけばな三大流派のひとつである「草月流(そうげつりゅう)」の一級師範であり、現代華道家として活動する大薗彩芳さん。 玩具メーカーやゲーム会社での「ものづくり」の経験を経て、現在は花以外の日用品や廃材といった多様な素材を用いて、その場所でしか再現しない「唯一無二性」のある作品を生み出しています。さらに、パブリックアートの領域でも活動の幅を広げ続けています。 本記事では、大薗さんが華道家を志した道のりと『ACTA+』との出会い、作品づくりにおけるこだわりと今後の展望についてお話を伺いました。 企業での「ものづくり」を経て、華道家へ。異素材表現に至るまでの道のり ――まずは、簡単に自己紹介をお願いします。 大薗さん:私は現在、いけばなの草月流の一級師範で、華道家として活動しています。 大学卒業後に入社したのは、憧れであった大手の玩具メーカーです。特撮ヒーロー作品を中心とした玩具や雑貨の開発に携わっていて、1年目からその商品企画開発を担当させてもらいました。 その後、メガベンチャーのIT企業に転職し、事業開発のマネージャーとしてゲーム制作やメタバース関連の大型プロジェクトなどに多く携わりました。 △HOSEKI(パブリック・アート展「神秘の森」) ――会社員を約15年されてきたのですよね。そこから華道の道に進まれるきっかけがあったのでしょうか? 大薗さん:明確な「きっかけ」があったというよりは、「ずっと狙っていた」という感覚に近いですね。3年から5年くらいは、チャンスがあれば生け花やアートだけで家庭を養いたいと考え、ビジネスマンと華道家の2軸で活動していたのです。 ただ、当時は私が理想とするような若手でいけばなのみで生活ができている方がほとんどおらず、先輩方にも相談できる環境でもなかったので、自分で茨の道を模索し続けていた時期がありました。最終的には、会社員としての収入と拮抗してきたタイミングで、華道家一本への転向を決めました。 もう一つ大きかったきっかけは、アウトプットのスピードです。玩具やゲームの開発は、完成するまでに半年から数年単位で時間がかかるのですが、華道やアートは、その場で形になる。その瞬間に生まれる爽快感には、魅力がありました。 華道では、「いけばな草月流」という流派に所属しています。私が生まれる前から母が草月流師範やいけばな作家として活動していたため、育ってきた環境には常にお花やアートが近くにありました。一般的にいけばなというと「花」だけを扱うイメージが強いと思うんですが、草月流では花だけでなく、枝や木など、花以外の「異素材」を使います。私自身も、異素材を使った表現が得意ですね。 △「神秘の森」で使用した素材は、イトーキ社の工場から出た、古いオフィスチェアの部品などの廃棄素材 ――『ACTA+』との出会いについて、教えてください。 大薗さん:最初のきっかけは、2022年に『ACTA+』さんが主催した公募展です。廃棄物を使った現代アートの公募「COIL Upcycle Art Contest 2022」の募集要項を取り寄せたことが始まりでした。自分の作風的にも合いそうだなと感じ、応募を検討していたのですが、そのときはタイミングが合わず、出展には至りませんでした。 その後、『ACTA+』の代表橋本さんとSNSで、何度かやり取りさせてもらっていましたが、その時点ではまだ直接お会いしたことはなかったんです。 初めてお会いしたのは、草月流の後輩である渡部さんの展示会です。場所は東京・二子玉川で開催されていて、生活圏だったこともあって立ち寄ったところ、『ACTA+』の橋本さんと初めてお会いしました。いろいろとお話しする中で意気投合し、現在につながっています。 作品制作の「初め」と「終わり」に宿る高揚感。創作に惹かれ続ける理由 ...
【インタビュー記事】いけばなをアートに再構築する。大薗彩芳さんが挑む、新たな表現のかたち
いけばな三大流派のひとつである「草月流(そうげつりゅう)」の一級師範であり、現代華道家として活動する大薗彩芳さん。 玩具メーカーやゲーム会社での「ものづくり」の経験を経て、現在は花以外の日用品や廃材といった多様な素材を用いて、その場所でしか再現しない「唯一無二性」のある作品を生み出しています。さらに、パブリックアートの領域でも活動の幅を広げ続けています。 本記事では、大薗さんが華道家を志した道のりと『ACTA+』との出会い、作品づくりにおけるこだわりと今後の展望についてお話を伺いました。 企業での「ものづくり」を経て、華道家へ。異素材表現に至るまでの道のり ――まずは、簡単に自己紹介をお願いします。 大薗さん:私は現在、いけばなの草月流の一級師範で、華道家として活動しています。 大学卒業後に入社したのは、憧れであった大手の玩具メーカーです。特撮ヒーロー作品を中心とした玩具や雑貨の開発に携わっていて、1年目からその商品企画開発を担当させてもらいました。 その後、メガベンチャーのIT企業に転職し、事業開発のマネージャーとしてゲーム制作やメタバース関連の大型プロジェクトなどに多く携わりました。 △HOSEKI(パブリック・アート展「神秘の森」) ――会社員を約15年されてきたのですよね。そこから華道の道に進まれるきっかけがあったのでしょうか? 大薗さん:明確な「きっかけ」があったというよりは、「ずっと狙っていた」という感覚に近いですね。3年から5年くらいは、チャンスがあれば生け花やアートだけで家庭を養いたいと考え、ビジネスマンと華道家の2軸で活動していたのです。 ただ、当時は私が理想とするような若手でいけばなのみで生活ができている方がほとんどおらず、先輩方にも相談できる環境でもなかったので、自分で茨の道を模索し続けていた時期がありました。最終的には、会社員としての収入と拮抗してきたタイミングで、華道家一本への転向を決めました。 もう一つ大きかったきっかけは、アウトプットのスピードです。玩具やゲームの開発は、完成するまでに半年から数年単位で時間がかかるのですが、華道やアートは、その場で形になる。その瞬間に生まれる爽快感には、魅力がありました。 華道では、「いけばな草月流」という流派に所属しています。私が生まれる前から母が草月流師範やいけばな作家として活動していたため、育ってきた環境には常にお花やアートが近くにありました。一般的にいけばなというと「花」だけを扱うイメージが強いと思うんですが、草月流では花だけでなく、枝や木など、花以外の「異素材」を使います。私自身も、異素材を使った表現が得意ですね。 △「神秘の森」で使用した素材は、イトーキ社の工場から出た、古いオフィスチェアの部品などの廃棄素材 ――『ACTA+』との出会いについて、教えてください。 大薗さん:最初のきっかけは、2022年に『ACTA+』さんが主催した公募展です。廃棄物を使った現代アートの公募「COIL Upcycle Art Contest 2022」の募集要項を取り寄せたことが始まりでした。自分の作風的にも合いそうだなと感じ、応募を検討していたのですが、そのときはタイミングが合わず、出展には至りませんでした。 その後、『ACTA+』の代表橋本さんとSNSで、何度かやり取りさせてもらっていましたが、その時点ではまだ直接お会いしたことはなかったんです。 初めてお会いしたのは、草月流の後輩である渡部さんの展示会です。場所は東京・二子玉川で開催されていて、生活圏だったこともあって立ち寄ったところ、『ACTA+』の橋本さんと初めてお会いしました。いろいろとお話しする中で意気投合し、現在につながっています。 作品制作の「初め」と「終わり」に宿る高揚感。創作に惹かれ続ける理由 ...
【インタビュー記事】素材に刻まれた時間から、記憶をかたちにする。ルー・チーユンさんの作品世界
台湾出身で、現在は日本を拠点に活動する彫刻家・インスタレーション作家のルー・チーユンさん。セメントやガラス、鏡、既製品など多様な素材を組み合わせたミクストメディア作品を手がけています。 ルー・チーユンさんが『ACTA+』と出会ったのは、日本橋で開催された公募展「ACTA+ ART AWARD 2024」がきっかけでした。今回開催された「銀座サスティナブルファッション&アート展」では、故郷の台湾の風景と、ルー・チーユンさんの経験や視点を交差させた新作を発表しています。 本記事では、ルー・チーユンさんのアーティストとしてのあゆみや作品制作の過程、そして出展作品に込めた想いについてお話を伺いました。 多様な素材を横断し、記憶をかたちにする。ルー・チーユンさんの表現 ──まずは、簡単に自己紹介をお願いします。 ルー・チーユンさん:私は台湾出身で、現在は日本を拠点に活動している彫刻家・インスタレーション作家です。 セメントやガラス、鏡など、さまざまな素材を組み合わせたミクストメディア作品を制作しています。素材の質感や、そこに残された痕跡を手がかりにしながら、現代社会におけるアイデンティティや時間の重なりについて考えています。 近年では建築廃材を取り入れて、絵画と立体を横断する造形作品をつくっています。 ──『ACTA+』との出会いは、公募展がきっかけだったそうですね。 ルー・チーユンさん:はい。『ACTA+』さんと出会ったのは、日本橋で開催された公募展「ACTA+ ART AWARD 2024」への参加がきっかけでした。 当時、公募展をいろいろと調べていたのですが、年齢や国籍、キャリアなど、さまざまな条件があって応募できないものも多かったんです。私はアーティストとしてデビューしてから10年以上経っているので、若手向けの公募展には当てはまらないことも多くて。 その中で、『ACTA+』の公募展はテーマも含めて自分に合っていると感じて、応募しました。知り合いが以前探していたこともあって、印象に残っていたのです。 △ ACTA+ ART AWARD2024で審査員特別賞を受賞した作品「昨夜星辰」 ──今回の「銀座サスティナブルファッション&アート展」では、どのような作品を出展されましたか? ルー・チーユンさん:今回発表したのは、『Mount Banpingー土、湯圓、看板、セメント工場』『Mount Banpingー山の稜線』の2作品です。 故郷の台湾(高雄)の風景をモチーフにしていて、街で拾い集めたスケートボードや建築廃材などを組み合わせてつくりました。素材に残っている傷や摩耗の跡から、その場所が持っている時間や記憶みたいなものを感じ取り、それを一つの風景のイメージで作品に表現しています。...
【インタビュー記事】素材に刻まれた時間から、記憶をかたちにする。ルー・チーユンさんの作品世界
台湾出身で、現在は日本を拠点に活動する彫刻家・インスタレーション作家のルー・チーユンさん。セメントやガラス、鏡、既製品など多様な素材を組み合わせたミクストメディア作品を手がけています。 ルー・チーユンさんが『ACTA+』と出会ったのは、日本橋で開催された公募展「ACTA+ ART AWARD 2024」がきっかけでした。今回開催された「銀座サスティナブルファッション&アート展」では、故郷の台湾の風景と、ルー・チーユンさんの経験や視点を交差させた新作を発表しています。 本記事では、ルー・チーユンさんのアーティストとしてのあゆみや作品制作の過程、そして出展作品に込めた想いについてお話を伺いました。 多様な素材を横断し、記憶をかたちにする。ルー・チーユンさんの表現 ──まずは、簡単に自己紹介をお願いします。 ルー・チーユンさん:私は台湾出身で、現在は日本を拠点に活動している彫刻家・インスタレーション作家です。 セメントやガラス、鏡など、さまざまな素材を組み合わせたミクストメディア作品を制作しています。素材の質感や、そこに残された痕跡を手がかりにしながら、現代社会におけるアイデンティティや時間の重なりについて考えています。 近年では建築廃材を取り入れて、絵画と立体を横断する造形作品をつくっています。 ──『ACTA+』との出会いは、公募展がきっかけだったそうですね。 ルー・チーユンさん:はい。『ACTA+』さんと出会ったのは、日本橋で開催された公募展「ACTA+ ART AWARD 2024」への参加がきっかけでした。 当時、公募展をいろいろと調べていたのですが、年齢や国籍、キャリアなど、さまざまな条件があって応募できないものも多かったんです。私はアーティストとしてデビューしてから10年以上経っているので、若手向けの公募展には当てはまらないことも多くて。 その中で、『ACTA+』の公募展はテーマも含めて自分に合っていると感じて、応募しました。知り合いが以前探していたこともあって、印象に残っていたのです。 △ ACTA+ ART AWARD2024で審査員特別賞を受賞した作品「昨夜星辰」 ──今回の「銀座サスティナブルファッション&アート展」では、どのような作品を出展されましたか? ルー・チーユンさん:今回発表したのは、『Mount Banpingー土、湯圓、看板、セメント工場』『Mount Banpingー山の稜線』の2作品です。 故郷の台湾(高雄)の風景をモチーフにしていて、街で拾い集めたスケートボードや建築廃材などを組み合わせてつくりました。素材に残っている傷や摩耗の跡から、その場所が持っている時間や記憶みたいなものを感じ取り、それを一つの風景のイメージで作品に表現しています。...
【インタビュー記事】都市の瓦礫から生まれる生命。青沼優介さんのアートの視点
たんぽぽの綿毛を用いた作品を制作するアーティスト・デザイナーの青沼優介さん。都市や建築をテーマにした独自の表現を展開しています。 2026年に東京で開催された、廃棄物を用いた『ACTA+』のパブリックアート展「神秘の森」では、参加アーティストの一人として参加。東京駅周辺で排出された瓦礫とたんぽぽの綿毛を活かした作品を展示し、都市の瓦礫から新たな生命が立ち上がるような景色を表現しています。 本記事では、青沼さんのこれまでの歩みや作品づくりの過程、アートにおける視点や今後の展望についてお話を伺いました。 たんぽぽの綿毛から「建築作品」を生み出す。青沼優介さんの歩み ――まずは、簡単に自己紹介をお願いします。 青沼さん:私は現在、アーティスト・デザイナーとして活動しています。武蔵野美術大学造形学部工芸工業デザイン学科を卒業後、東京藝術大学大学院美術研究科の修士課程を修了しました。 作品では、主に「たんぽぽの綿毛」を用いた建築作品を制作しています。その代表作の一つが、「息を建てる/都市を植える」で、2018年の「TOKYO MIDTOWN AWARD」でグランプリをいただいた作品になります。 また、教育活動にも携わっており、東京都立大学システムデザイン学部で助教を務めるほか、武蔵野美術大学では非常勤講師としても活動しています。 ――青沼さんは現在、ビジネスパーソンが行き交うオフィスビル内で作品を制作されているそうですね。 青沼さん:はい。2025年10月から、日本橋室町三井タワー5階のオフィスビルのロビーに小さな制作スペース「三畳芸術センター」を設け、作品の制作や展示を行っています。 「三畳あれば作品がつくれる」という発想から、オフィスビルという日常の場所で、アトリエを開くような形で始めた取り組みです。そこでは、先ほどお話した代表作「息を建てる/都市を植える」のほか、日本橋近辺で拾った瓦礫を土台に、たんぽぽの綿毛を用いた作品なども展示しています。 ※本インタビューは2026年2月19日に実施したものです。上記の企画は終了しています。 瓦礫・綿毛・和紙でつくる再生の景色。『ACTA+』の「神秘の森」の展示作品 ――2026年に東京で開催された『ACTA+』のパブリックアート展「神秘の森」に参加されていますが、作品について教えてください。 青沼さん:はい。今回の展示では、東京駅周辺で排出された瓦礫を素材にした作品「息を建てる虫瞰」を制作しました。 再開発の中で生まれる瓦礫は、建物が解体され、砕かれて小さな石になっていきます。その姿を見ていると、分解された「細胞」のようにも見えるんです。私はそうした解体の過程を「生物の死と同じだ」と捉えたんです。 解体は終わりではない。分解であり、再生の始まりだと。 そこで今回の作品では、瓦礫から、たんぽぽの綿毛が立ち上がるような構造にしています。瓦礫から「新しい建築」としての生命が芽生え、そこから景色が生まれていくようなイメージでつくりました。 △東京ミッドタウン八重洲での展示の様子 ――今回の作品には、瓦礫やたんぽぽ以外にはどのような素材を用いたのでしょうか? 青沼さん:作品は、東京駅周辺で入手した瓦礫とたんぽぽの綿毛、そして和紙を用いて制作しました。瓦礫、たんぽぽの綿毛、和紙という対極的な素材を組み合わせることで、解体と再生を表現しています。...
【インタビュー記事】都市の瓦礫から生まれる生命。青沼優介さんのアートの視点
たんぽぽの綿毛を用いた作品を制作するアーティスト・デザイナーの青沼優介さん。都市や建築をテーマにした独自の表現を展開しています。 2026年に東京で開催された、廃棄物を用いた『ACTA+』のパブリックアート展「神秘の森」では、参加アーティストの一人として参加。東京駅周辺で排出された瓦礫とたんぽぽの綿毛を活かした作品を展示し、都市の瓦礫から新たな生命が立ち上がるような景色を表現しています。 本記事では、青沼さんのこれまでの歩みや作品づくりの過程、アートにおける視点や今後の展望についてお話を伺いました。 たんぽぽの綿毛から「建築作品」を生み出す。青沼優介さんの歩み ――まずは、簡単に自己紹介をお願いします。 青沼さん:私は現在、アーティスト・デザイナーとして活動しています。武蔵野美術大学造形学部工芸工業デザイン学科を卒業後、東京藝術大学大学院美術研究科の修士課程を修了しました。 作品では、主に「たんぽぽの綿毛」を用いた建築作品を制作しています。その代表作の一つが、「息を建てる/都市を植える」で、2018年の「TOKYO MIDTOWN AWARD」でグランプリをいただいた作品になります。 また、教育活動にも携わっており、東京都立大学システムデザイン学部で助教を務めるほか、武蔵野美術大学では非常勤講師としても活動しています。 ――青沼さんは現在、ビジネスパーソンが行き交うオフィスビル内で作品を制作されているそうですね。 青沼さん:はい。2025年10月から、日本橋室町三井タワー5階のオフィスビルのロビーに小さな制作スペース「三畳芸術センター」を設け、作品の制作や展示を行っています。 「三畳あれば作品がつくれる」という発想から、オフィスビルという日常の場所で、アトリエを開くような形で始めた取り組みです。そこでは、先ほどお話した代表作「息を建てる/都市を植える」のほか、日本橋近辺で拾った瓦礫を土台に、たんぽぽの綿毛を用いた作品なども展示しています。 ※本インタビューは2026年2月19日に実施したものです。上記の企画は終了しています。 瓦礫・綿毛・和紙でつくる再生の景色。『ACTA+』の「神秘の森」の展示作品 ――2026年に東京で開催された『ACTA+』のパブリックアート展「神秘の森」に参加されていますが、作品について教えてください。 青沼さん:はい。今回の展示では、東京駅周辺で排出された瓦礫を素材にした作品「息を建てる虫瞰」を制作しました。 再開発の中で生まれる瓦礫は、建物が解体され、砕かれて小さな石になっていきます。その姿を見ていると、分解された「細胞」のようにも見えるんです。私はそうした解体の過程を「生物の死と同じだ」と捉えたんです。 解体は終わりではない。分解であり、再生の始まりだと。 そこで今回の作品では、瓦礫から、たんぽぽの綿毛が立ち上がるような構造にしています。瓦礫から「新しい建築」としての生命が芽生え、そこから景色が生まれていくようなイメージでつくりました。 △東京ミッドタウン八重洲での展示の様子 ――今回の作品には、瓦礫やたんぽぽ以外にはどのような素材を用いたのでしょうか? 青沼さん:作品は、東京駅周辺で入手した瓦礫とたんぽぽの綿毛、そして和紙を用いて制作しました。瓦礫、たんぽぽの綿毛、和紙という対極的な素材を組み合わせることで、解体と再生を表現しています。...
【イベントレポート東京・銀座】国内外の文化が交差する、サスティナブルファッション&アート展
展示と体験が重なる「銀座サスティナブルファッション&アート展」。多彩なブースが織りなす空間 2026年4月9日(木)〜4月12日(日)の4日間、東京・銀座のギャラリー枝香庵および枝香庵Flatで「銀座サスティナブルファッション&アート展」が開催されました。 本展は、ファッション・アート・クラフトを通じて「サスティナブル」な学びや交流を、楽しみながら体感できる場として企画されたイベントです。 国外の起業家や作家のブースでは、アフリカ・キベラの若者と写真家の協働による作品や、タイの少数民族の伝統刺繍を活かしたファッションアイテムの展示や販売を実施。一方、国内のブースでは、日本各地の素材を用いたランプシェードや花器の展示・販売に加えて、オーガニックドリンクやコーヒーの提供、パーソナルカラー診断など、多彩な文化や価値観に触れられるブースが展開されていました。 さらに期間中には、蜜蝋アートや金継ぎを体験できるワークショップや、サスティナブルファッションをテーマにしたセミナーなども開催され、来場者が体験を通じて理解を深める機会が設けられていました。 その中で、株式会社ACTA PLUS(以下、『ACTA+』)は、ギャラリーからの声がけを受け、キュレーションを担当。これまで廃棄物アートを通じて「サスティナビリティを憧れとして社会に届けること」を目指してきた『ACTA+』の視点から、本テーマと親和性の高いアーティスト3名の作家を選出し、作品の展示・販売を行いました。 【銀座サスティナブルファッション&アート展 開催概要】・会場:ギャラリー枝香庵 & 枝香庵Flat(東京都中央区銀座3丁目3-12 7F・8F)・開催期間:2026年4月9日(木)〜4月12日(日)・時間:11:00〜19:00(会期中無休)・入場:無料 多様な素材が語る「サスティナブル」。『ACTA+』がキュレーションした3名のアーティスト作品紹介 本展では、『ACTA+』がキュレーションした3名のアーティストの作品展示・販売が行われました。素材や手法の異なるそれぞれの作品は、「サスティナブル」というテーマを、廃棄物を用いてさまざまな表現で新たな価値や視点を提供する作品となっています。 ここでは、本展に参加したアーティスト3名の作品を紹介します。 ●Yoko Ichikawaさん| 作品名:『Still Growing』 Yoko Ichikawaさんは、アジアやヨーロッパ各国で滞在制作を行い、土地の記憶や文化、自然をテーマに、インスタレーションやドローイングなどの多様な表現で作品を発表している、現代美術家・イラストレーターです。 本作『Still Growing』は、2026年2月に開催された「神秘の森」のインスタレーションの一部を ©アルメタックス株式会社のアートフレーム「kabestyle」に額装し、日常の中で楽しめる作品として新たなかたちに展開した作品です。 空間全体で体験する大規模なインスタレーションとはまた異なり、「森のかけら」をそのままフレームに閉じ込め、自宅へ持ち帰るような身近な感覚をもたらしていました。 東京ミッドタウン八重洲での展示「神秘の森」で展示されていた際の様子 ●鈴木 麻希子さん |...
【イベントレポート東京・銀座】国内外の文化が交差する、サスティナブルファッション&アート展
展示と体験が重なる「銀座サスティナブルファッション&アート展」。多彩なブースが織りなす空間 2026年4月9日(木)〜4月12日(日)の4日間、東京・銀座のギャラリー枝香庵および枝香庵Flatで「銀座サスティナブルファッション&アート展」が開催されました。 本展は、ファッション・アート・クラフトを通じて「サスティナブル」な学びや交流を、楽しみながら体感できる場として企画されたイベントです。 国外の起業家や作家のブースでは、アフリカ・キベラの若者と写真家の協働による作品や、タイの少数民族の伝統刺繍を活かしたファッションアイテムの展示や販売を実施。一方、国内のブースでは、日本各地の素材を用いたランプシェードや花器の展示・販売に加えて、オーガニックドリンクやコーヒーの提供、パーソナルカラー診断など、多彩な文化や価値観に触れられるブースが展開されていました。 さらに期間中には、蜜蝋アートや金継ぎを体験できるワークショップや、サスティナブルファッションをテーマにしたセミナーなども開催され、来場者が体験を通じて理解を深める機会が設けられていました。 その中で、株式会社ACTA PLUS(以下、『ACTA+』)は、ギャラリーからの声がけを受け、キュレーションを担当。これまで廃棄物アートを通じて「サスティナビリティを憧れとして社会に届けること」を目指してきた『ACTA+』の視点から、本テーマと親和性の高いアーティスト3名の作家を選出し、作品の展示・販売を行いました。 【銀座サスティナブルファッション&アート展 開催概要】・会場:ギャラリー枝香庵 & 枝香庵Flat(東京都中央区銀座3丁目3-12 7F・8F)・開催期間:2026年4月9日(木)〜4月12日(日)・時間:11:00〜19:00(会期中無休)・入場:無料 多様な素材が語る「サスティナブル」。『ACTA+』がキュレーションした3名のアーティスト作品紹介 本展では、『ACTA+』がキュレーションした3名のアーティストの作品展示・販売が行われました。素材や手法の異なるそれぞれの作品は、「サスティナブル」というテーマを、廃棄物を用いてさまざまな表現で新たな価値や視点を提供する作品となっています。 ここでは、本展に参加したアーティスト3名の作品を紹介します。 ●Yoko Ichikawaさん| 作品名:『Still Growing』 Yoko Ichikawaさんは、アジアやヨーロッパ各国で滞在制作を行い、土地の記憶や文化、自然をテーマに、インスタレーションやドローイングなどの多様な表現で作品を発表している、現代美術家・イラストレーターです。 本作『Still Growing』は、2026年2月に開催された「神秘の森」のインスタレーションの一部を ©アルメタックス株式会社のアートフレーム「kabestyle」に額装し、日常の中で楽しめる作品として新たなかたちに展開した作品です。 空間全体で体験する大規模なインスタレーションとはまた異なり、「森のかけら」をそのままフレームに閉じ込め、自宅へ持ち帰るような身近な感覚をもたらしていました。 東京ミッドタウン八重洲での展示「神秘の森」で展示されていた際の様子 ●鈴木 麻希子さん |...
【イベントレポート東京・神秘の森】都市に現れた、循環を体験するパブリック・アート展
都市の中心に現れた「神秘の森」。『ACTA+』が届けるパブリック・アート展 2026年2月21日(土)〜3月5日(木)、東京ミッドタウン八重洲1Fガレリアにて、廃棄物を用いたパブリック・アート展「神秘の森」を株式会社ACTA PLUS(以下、『ACTA+』)が主催しました。 会場となった東京ミッドタウン八重洲は、日本を代表するビジネス街・東京駅前に位置する都市空間。神秘的な音楽が流れる中、都市の中心に突如現れ、廃棄物から生まれたアート作品によって構成された「森」は行き交う人々の足を止め、思わず奥へと進みたくなるような没入感を生み出していました。 「神秘の森」特設ページはこちらから 『ACTA+』はこれまで、廃棄物アートを通じて、サステナビリティを「正論」ではなく「憧れ」として社会に届けることを目指してきました。 今回の展示「神秘の森」のミッションは「サステナビリティを“体験”として届け廃棄物を憧れとして心に残す」こと。環境問題を説明するのではなく、空間体験を通じて心に残す試みです。 では、なぜ今『ACTA+』は東京でこの展示を行うのでしょうか。 その背景には、日本がかつて持っていた「循環の文化」があります。江戸時代の都市では、資源を無駄なく使い切り、再び活かす循環の仕組みが社会に存在していました。 「神秘の森」は、かつての循環文化と未来のサステナブルな社会を静かにつなぐ試みでもあったのです。 江戸の知恵と未来が交差する「循環の物語」 東京は、かつて江戸と呼ばれた都市です。 本企画「神秘の森」は、単なるアート展示の枠を超え、江戸文化の中心地であった八重洲を起点に、50年後・100年後の人と地球の営みを問い直す試みとして企画されました。 江戸の暮らしの中には、「直して使う」「繕って長く着る」といった循環の文化が自然と息づいていました。壊れた道具を修理し、古くなった衣服を仕立て直しながら使い続ける。そこには、単に無駄を出さないためだけではなく「ものと共に生きていく感覚」がありました。 一方で現代の社会では、大量生産・大量消費の仕組みの中で、多くのものが役目を終えると廃棄物として処理されていきます。 私たちが生み出したそれらの多くは、自然の循環の中に戻ることができない存在でもあります。『ACTA+』が取り組む廃棄物アートは、そうした「大地に戻れないもの」を、アートという媒体を通して新たな価値へと変え、未来へつなぎ直す試みです。 今回の展示「神秘の森」は、廃棄物を素材としたアート作品によって構成された「森」の回遊型インスタレーションとして展開されました。 来場者は、廃棄物から生み出された多様な形態の作品の間を、森の中を散策するように歩きながら展示空間を巡ります。作品や展示の随所には、立ち止まって考えたくなるような視点や問いがちりばめられており、廃棄物や循環、今後の人の営みについて思考を巡らせるきっかけを生み出します。 こうした「森」を巡る体験は、江戸から続く循環の文化と、未来のサステナブルな社会を静かにつなぎ直す時間でもあります。説明や正論として伝えるのではなく、空間体験を通して循環の感覚に気づくこと。「神秘の森」は、過去から未来へと続く循環の物語を、アートを通して体験する場として生まれたのです。 森を巡りながら出会うアート。「神秘の森」を彩った3名のアーティスト 本展「神秘の森」では、廃棄物を素材とした作品が空間を構成し、来場者が森を巡るように歩きながら作品と出会う展示が展開されました。 ここでは「神秘の森」で展示され、廃棄物から新たな価値を生み出した3名のアーティストの作品を紹介します。 ●大薗 彩芳さん | 作品名:『HOSEKI』 大薗さんは、いけばな三大流派の一つである草月流の一級師範。伝統的ないけばなの要素を分解し、自然と人工の美しさの融合に可能性を見出し、作品を制作する現代華道家です。 作品には、海岸で拾われた流木に加え、株式会社イトーキから提供されたオフィス家具の廃材(椅子の脚や肘掛けなど)が使用されています。廃棄されるはずだった無機質なパーツが、作品の中で新たに存在感を放っています。グレーやシルバーといった工業的な色合いの素材は、紫や緑、赤といった鮮やかな色彩によって彩られ、宝石のように七色に輝くオブジェへと変化しています。作品は下からライトアップされることで、廃棄物の素材感がやわらかく浮かび上がり、神秘的な空間の中に佇んでいました。 ●Yoko...
【イベントレポート東京・神秘の森】都市に現れた、循環を体験するパブリック・アート展
都市の中心に現れた「神秘の森」。『ACTA+』が届けるパブリック・アート展 2026年2月21日(土)〜3月5日(木)、東京ミッドタウン八重洲1Fガレリアにて、廃棄物を用いたパブリック・アート展「神秘の森」を株式会社ACTA PLUS(以下、『ACTA+』)が主催しました。 会場となった東京ミッドタウン八重洲は、日本を代表するビジネス街・東京駅前に位置する都市空間。神秘的な音楽が流れる中、都市の中心に突如現れ、廃棄物から生まれたアート作品によって構成された「森」は行き交う人々の足を止め、思わず奥へと進みたくなるような没入感を生み出していました。 「神秘の森」特設ページはこちらから 『ACTA+』はこれまで、廃棄物アートを通じて、サステナビリティを「正論」ではなく「憧れ」として社会に届けることを目指してきました。 今回の展示「神秘の森」のミッションは「サステナビリティを“体験”として届け廃棄物を憧れとして心に残す」こと。環境問題を説明するのではなく、空間体験を通じて心に残す試みです。 では、なぜ今『ACTA+』は東京でこの展示を行うのでしょうか。 その背景には、日本がかつて持っていた「循環の文化」があります。江戸時代の都市では、資源を無駄なく使い切り、再び活かす循環の仕組みが社会に存在していました。 「神秘の森」は、かつての循環文化と未来のサステナブルな社会を静かにつなぐ試みでもあったのです。 江戸の知恵と未来が交差する「循環の物語」 東京は、かつて江戸と呼ばれた都市です。 本企画「神秘の森」は、単なるアート展示の枠を超え、江戸文化の中心地であった八重洲を起点に、50年後・100年後の人と地球の営みを問い直す試みとして企画されました。 江戸の暮らしの中には、「直して使う」「繕って長く着る」といった循環の文化が自然と息づいていました。壊れた道具を修理し、古くなった衣服を仕立て直しながら使い続ける。そこには、単に無駄を出さないためだけではなく「ものと共に生きていく感覚」がありました。 一方で現代の社会では、大量生産・大量消費の仕組みの中で、多くのものが役目を終えると廃棄物として処理されていきます。 私たちが生み出したそれらの多くは、自然の循環の中に戻ることができない存在でもあります。『ACTA+』が取り組む廃棄物アートは、そうした「大地に戻れないもの」を、アートという媒体を通して新たな価値へと変え、未来へつなぎ直す試みです。 今回の展示「神秘の森」は、廃棄物を素材としたアート作品によって構成された「森」の回遊型インスタレーションとして展開されました。 来場者は、廃棄物から生み出された多様な形態の作品の間を、森の中を散策するように歩きながら展示空間を巡ります。作品や展示の随所には、立ち止まって考えたくなるような視点や問いがちりばめられており、廃棄物や循環、今後の人の営みについて思考を巡らせるきっかけを生み出します。 こうした「森」を巡る体験は、江戸から続く循環の文化と、未来のサステナブルな社会を静かにつなぎ直す時間でもあります。説明や正論として伝えるのではなく、空間体験を通して循環の感覚に気づくこと。「神秘の森」は、過去から未来へと続く循環の物語を、アートを通して体験する場として生まれたのです。 森を巡りながら出会うアート。「神秘の森」を彩った3名のアーティスト 本展「神秘の森」では、廃棄物を素材とした作品が空間を構成し、来場者が森を巡るように歩きながら作品と出会う展示が展開されました。 ここでは「神秘の森」で展示され、廃棄物から新たな価値を生み出した3名のアーティストの作品を紹介します。 ●大薗 彩芳さん | 作品名:『HOSEKI』 大薗さんは、いけばな三大流派の一つである草月流の一級師範。伝統的ないけばなの要素を分解し、自然と人工の美しさの融合に可能性を見出し、作品を制作する現代華道家です。 作品には、海岸で拾われた流木に加え、株式会社イトーキから提供されたオフィス家具の廃材(椅子の脚や肘掛けなど)が使用されています。廃棄されるはずだった無機質なパーツが、作品の中で新たに存在感を放っています。グレーやシルバーといった工業的な色合いの素材は、紫や緑、赤といった鮮やかな色彩によって彩られ、宝石のように七色に輝くオブジェへと変化しています。作品は下からライトアップされることで、廃棄物の素材感がやわらかく浮かび上がり、神秘的な空間の中に佇んでいました。 ●Yoko...
【インタビュー記事】「結界」を張り、別世界を立ち上げる。Yoko Ichikawaさんがつくる...
研究者として美術史を学び、社会人としてのキャリアを経て、現代美術家とイラストレーターへと転身した Yoko Ichikawaさん。国内外のアーティスト・イン・レジデンスを拠点に、インスタレーションとドローイングを軸とした作品制作を続けています。 Yoko Ichikawaさんの表現の特徴は、自身を地域や社会の声を可視化する「媒体(メディア)」として捉えている点にあります。 2026年2月~3月に開催された、廃棄物を用いた『ACTA+』のパブリックアート展「神秘の森」では、アーティストの一人として、来場者が日常から切り離されるような不思議な「森の空間」を表現しました。 今回は、Yoko Ichikawaさんがアーティストとして歩み始めたきっかけから、創作スタイル、生成AI時代における表現者としての思想、そして今後の展望までを伺いました。 美大ではなく、研究室から。美術史から歩み始めたアーティストの道 ――まずは、簡単に自己紹介をお願いします。 Yoko Ichikawaさん:私は、現代美術家とイラストレーターとして活動しています。活動拠点は群馬県と東京都で、制作の際は国内外のアーティスト・イン・レジデンスに滞在しながら作品をつくることが多いですね。 主な制作媒体は、インスタレーションとドローイングです。 ――Yoko Ichikawaさんは、アーティストとしては少し珍しい経歴をお持ちですよね。 Yoko Ichikawaさん:そうですね。いわゆる美大出身ではありません。大学は国際基督教大学(ICU) に進学して、美術史を専攻していました。専攻したテーマは「19世紀イギリスのタペストリー」という、とてもニッチな分野です。 また、当時はグラフィックデザイナーになりたいと思っていたので、ICUに通いながら、桑沢デザイン研究所にも通っていました。いわゆるダブルスクールですね。ただ、そこで周囲の人の才能に圧倒されてしまって、一度はデザインの道を諦めたんです。自分にとっては大きな挫折でもありましたね。 その後、一橋大学大学院に進学し、ICUと同様に美術史を専攻して研究を続けました。 ――2026年の『ACTA+』のパブリックアート展にも参加されているのですよね。 Yoko Ichikawaさん:はい。2026年2月~3月に東京で開催された『ACTA+』のパブリックアート展「神秘の森」にアーティストとして参加しました。廃棄物を活用しながら、「あれ?ここってどこだっけ?」と、来場者がふと立ち止まるような感覚を味わえる森の空間を表現しました。 △神秘の森展示作品「Still Growing」 「人生でやり残したことはないか」。留学と仕事を経てたどり着いた30代の決断 ――もともと、アートは好きだったのでしょうか。 Yoko Ichikawaさん:はい。子どもの頃から、つくること自体は好きでした。絵を描いたり、段ボールや紙粘土で何かをつくったりしていましたね。NHKの番組「つくってあそぼ」のワクワクさんが大好きな子どもだったんです(笑)...
【インタビュー記事】「結界」を張り、別世界を立ち上げる。Yoko Ichikawaさんがつくる...
研究者として美術史を学び、社会人としてのキャリアを経て、現代美術家とイラストレーターへと転身した Yoko Ichikawaさん。国内外のアーティスト・イン・レジデンスを拠点に、インスタレーションとドローイングを軸とした作品制作を続けています。 Yoko Ichikawaさんの表現の特徴は、自身を地域や社会の声を可視化する「媒体(メディア)」として捉えている点にあります。 2026年2月~3月に開催された、廃棄物を用いた『ACTA+』のパブリックアート展「神秘の森」では、アーティストの一人として、来場者が日常から切り離されるような不思議な「森の空間」を表現しました。 今回は、Yoko Ichikawaさんがアーティストとして歩み始めたきっかけから、創作スタイル、生成AI時代における表現者としての思想、そして今後の展望までを伺いました。 美大ではなく、研究室から。美術史から歩み始めたアーティストの道 ――まずは、簡単に自己紹介をお願いします。 Yoko Ichikawaさん:私は、現代美術家とイラストレーターとして活動しています。活動拠点は群馬県と東京都で、制作の際は国内外のアーティスト・イン・レジデンスに滞在しながら作品をつくることが多いですね。 主な制作媒体は、インスタレーションとドローイングです。 ――Yoko Ichikawaさんは、アーティストとしては少し珍しい経歴をお持ちですよね。 Yoko Ichikawaさん:そうですね。いわゆる美大出身ではありません。大学は国際基督教大学(ICU) に進学して、美術史を専攻していました。専攻したテーマは「19世紀イギリスのタペストリー」という、とてもニッチな分野です。 また、当時はグラフィックデザイナーになりたいと思っていたので、ICUに通いながら、桑沢デザイン研究所にも通っていました。いわゆるダブルスクールですね。ただ、そこで周囲の人の才能に圧倒されてしまって、一度はデザインの道を諦めたんです。自分にとっては大きな挫折でもありましたね。 その後、一橋大学大学院に進学し、ICUと同様に美術史を専攻して研究を続けました。 ――2026年の『ACTA+』のパブリックアート展にも参加されているのですよね。 Yoko Ichikawaさん:はい。2026年2月~3月に東京で開催された『ACTA+』のパブリックアート展「神秘の森」にアーティストとして参加しました。廃棄物を活用しながら、「あれ?ここってどこだっけ?」と、来場者がふと立ち止まるような感覚を味わえる森の空間を表現しました。 △神秘の森展示作品「Still Growing」 「人生でやり残したことはないか」。留学と仕事を経てたどり着いた30代の決断 ――もともと、アートは好きだったのでしょうか。 Yoko Ichikawaさん:はい。子どもの頃から、つくること自体は好きでした。絵を描いたり、段ボールや紙粘土で何かをつくったりしていましたね。NHKの番組「つくってあそぼ」のワクワクさんが大好きな子どもだったんです(笑)...