「ACTA+」は廃棄物をアート作品に生まれ変わらせ、持続可能性を「正論」から「憧れ」に変えることを目指すカルチャーブランドです。「やらなければいけない環境配慮」ではなく、「かっこいいから選びたくなる」文化を創るべく、アーティストと共に廃棄物の新たな価値を発信しています。
捨てられるはずの「芥」で持続可能な文化を創造
本社屋でのアート発表の様子
ACTA+は、廃棄物処理会社「株式会社ACTA PLUS」が立ち上げたカルチャーブランドです。ブランド名の「ACTA」は、「廃棄物」の意味で使われていた「芥(あくた)」に由来。「本来ならば捨てられるもの」を起点に、「アート」を通じて「自然と人との文化的共生」を図るべく活動を行っています。
ACTA+が目指しているのは、環境保護や持続可能性といった「やらなければいけないこと」が「憧れの存在」となる文化の創造です。「正論を、憧れに」をコンセプトに掲げ、国内外500名以上のアーティストと連携して廃棄物を素材としたアート作品の販売や企業向け企画など多様な事業を展開しています。そして、社会における「持続可能性」の文化を生み出すと同時に、アーティストへ活躍の場や報酬を還元する仕組みも構築しています。
どこか抽象的である「サステナビリティ」の概念をアート作品として可視化し、「憧れ」として社会に共有することで、自然に「環境に配慮する行動」が選ばれる新たな社会のスタンダードを築きたいと考えています。
環境に良いことを、“やらなきゃ”じゃなく“やりたい”に。正論を憧れに変えると決めた原体験
小学校への出張授業の様子
ACTA+は、廃棄物処理業を家業に持つ吉本龍太郎と橋本季和子が立ち上げました。吉本は「廃棄物が多く発生するほど事業が拡大する」業界の常識を変えるべく、廃棄物の新たな価値創造に挑戦。橋本は韓国での照明・空間デザインの経験を活かし、国内外の宿泊施設やアートコンテストの企画を手がけてきました。
廃棄物処理業界では、その特性から人材不足や産業衰退の危機に直面しています。若い世代が関心を抱き難い業界であることから人が集まりにくく、経験豊富な人材の確保が課題です。このような状況下で廃棄物処理業界が持続的に成長するためには、革新と変革が求められていると感じています。
吉本には、廃棄物処理業に携わる中で印象に残っている出来事があります。家業の一環で、吉本は環境学習として地域の学校へゴミ収集車を派遣し、ゴミの分別や3Rを教えていました。一見、子どもたちはゴミ収集車を間近で見ることに対して喜んでるように見えたものの、実際に話を聞くと「お母さんがゴミの分別をしなさいと言うから」といった反応。保護者の会話に耳を澄ませると、「ルールで決まっているから仕方なく分別しているけど、しなくていいならしない方がいい」との声が聞こえました。
「持続可能性」「環境保全」「サステナブル」などの耳馴染みの良いキーワードが、多くの人たちには「やらなきゃいけない」正論じみたものであることに気づいたのです。吉本は、「かっこいい」「憧れる」といった前向きな言葉で環境を伝える必要性を痛感し、ACTA+の立ち上げに至りました。
国内外のアーティストとコラボし廃棄物をアート作品に
ネットワークを持つアーティスト例
ACTA+の事業の核は、「本来捨てられるはずのものからアートが生まれる」過程です。人間の手によって生産されたものの、その代償として生まれ、捨てるしかなくなったもの。こうした廃棄物がアーティストの手で1つの作品として再構築されることで、「環境に良いこと」や「サステナビリティ」といった正論が「心を動かす価値ある体験」、すなわち「憧れ」に変化すると考えています。
現在、ACTA+の事業は大きく分けて2つの柱で構成されています。1つはアート作品やプロダクトを販売する「アートプラットフォーム事業」です。ACTA+では、国内外のアーティストとコラボし、廃棄物を素材としたアート作品や日常使いできるプロダクトを販売しています。廃棄物の風合いを生かした一点もので、売上の一部はアーティストやサステナブルなカルチャー醸成の取り組みに還元されています。
もう1つは「企業向け企画事業」です。企業や自治体と連携し、廃棄物を活用したアート作品の展示や空間プロデュースを行っています。ホテルや大学施設へのアート納品、美術館での展示など多様なプロジェクトを展開しています。
アートプロジェクトやホテルや百貨店とのコラボに挑
ACTA+ ART AWARDでの最終プレゼンの様子(2024)
ACTA+はアート作品の販売や企業向け企画以外にも、さまざまな企画に取り組んできました。「ACTA+ ART AWARD」は、2021年から開催している公募型のアートプロジェクトです。社会から不要だとされた「廃棄物」を起点とし、アーティストと一緒に「持続可能な文化」の模索を目的としています。2024年には、107名のアーティストから応募がありました。
TRUNK (HOTEL)yoyogi park(2023)
2023年には、東京・渋谷のライフスタイルホテル「TRUNK(HOTEL) YOYOGI PARK」とコラボ。ホテルの客室空間を演出する要素の1つとして、オーナーズスイートに廃棄物アート作品が常設設置されました。このアート作品は赤ワイン用のぶどう栽培に使用した針金で制作されたもの。廃棄物アートが空間要素の1つとして導入された事例となりました。2024年には大阪高島屋とタイアップし、ポップアップイベントを開催。ACTA+に参加する19名のアーティストが手掛けた「廃棄物から生まれたアートやプロダクト」を150点以上展示・販売しました。壁掛けアートや置き型オブジェ、サステナブルなインテリア用品など、バラエティに富んだ商品が並びました。
ACTA+メンバーからのメッセージ
ACTA+の2人からのメッセージをご紹介します。
■橋本季和子
廃棄物から生み出されたアートには、社会を変える力があると信じています。ACTA+は素材の背景や想いを大切にしながら、アーティストと共にアートを通じて持続可能性の新たな景色をつくる挑戦を続けています。そして、サステナブルが「正しさ」ではなく、「憧れ」として選ばれる未来を目指しています。祖父母の代から続く廃棄物処理業をルーツにもつ私たちだからこそ、実現していけると考えています。
■吉本龍太郎
ACTA+は、祖父が立ち上げた廃棄物処理業を家業に持つ私自身のルーツから生まれました。地方の一企業だからこそ見える「循環」のリアルを、世界に向けて美しく、誇らしく発信したい。持続可能性という「正論」を「憧れ」に変える——それが私たちの目指す未来です。