【インタビュー記事】木の廃材から生まれる生命感あふれる立体アート。廃材再生師・加治聖哉さんが語る創作

【インタビュー記事】木の廃材から生まれる生命感あふれる立体アート。廃材再生師・加治聖哉さんが語る創作

新潟県長岡市を拠点に活動する廃材再生師・加治聖哉さん。工務店や木製品を製造する工場から譲り受けた木材の廃材を活かし、猫や恐竜、ワニなど、生命感あふれる実物大の立体作品を制作しています。


近年は、こうした作品のオーダーメイド制作やレンタルを中心としながら、学校での講演やワークショップを通じて、ものづくりの楽しさや廃材を活かす発想を伝える活動にも取り組んでいます。


本記事では、加治さんが廃材アートを始めたきっかけや『ACTA+』との出会い、作品づくりへの想い、企業との取り組みや今後の展望についてお話を伺いました。

 

 

廃材アートとの歩み。地域おこし協力隊で育んだ創作活動と『ACTA+』との出会い


──まずは、簡単に自己紹介をお願いします。

加治さん:

私は新潟県の村上市出身で、現在は新潟県の長岡市を拠点に、木材の廃材を使った立体作品を制作しています。猫や犬、ワニ、恐竜、ジンベエザメなど、さまざまな動物をモチーフにした作品をつくり、オーダーメイド作品の制作や作品のレンタルを中心に活動しています。これまでに、公共空間や商業施設、アートフェスティバルなど、さまざまな場所に作品を設置してきました。


大学では、公立大学法人長岡造形大学 美術・工芸学科で、アクセサリーやジュエリーなどの金属加工を学び、卒業後は村上隆のアート総合商社「カイカイキキ」に就職しました。その後、2019年に新潟県長岡市の栃尾地域へ移住し、地域おこし協力隊として3年間活動しました。


──栃尾地域に移住されてからは、どのような活動をされていたのでしょうか?

加治さん:

当時、長岡市の地域おこし協力隊の主な事業は、商店街の中にある空き家を改装し、アートギャラリーをつくることでした。「アートで地域を盛り上げる」という考えのもと、さまざまな作品をつくらせてもらいながら活動していましたね。


──『ACTA+』との出会いについて教えてください。

加治さん:

きっかけは、『ACTA+』の代表・橋本さんが私の作品を見つけてくださったことです。

出会ったのは、3年ほど前だったと思います。たしかSNSで私の作品を見つけていただき、『ACTA+』さんからお問い合わせをいただいたんです。その後、打ち合わせをして、橋本さんがご家族と一緒に新潟まで足を運んでくださって。

そこから『ACTA+』さんとのお付き合いが始まりました。


 

大学での廃材との出会いが転機に。祖母から受け継いだ「あるものでつくる」という発想

 

──大学では金属加工を学ばれていたとのことですが、今の木材の廃材を使った制作スタイルは、どのように生まれたのでしょうか?

加治さん:

大学1年生の終わり頃、大学で廃材を見つけたことをきっかけに、木材を切ったり組み合わせたりして作品をつくり始めたんです。


もともと、「あるもので何かをつくる」という考え方は、祖母の影響が大きいですね。祖母はいわゆる「もったいないおばあちゃん」のような人で、身近にあるものを活かすという感覚は、祖母から教えてもらったものだと思っています。

金属を使った制作よりも、廃材を使った表現のほうに面白さを感じるようになり、卒業制作も現在と同じように廃材を使った作品をつくりました。「これで卒業制作をする」と伝えたら、先生に「お前の好きにしろ」って言われて(笑)。


専門の先生から教わったわけではなく、自分で試行錯誤しながら現在の制作スタイルを身に付けていきました。


 

廃材の個性をそのまま作品へ。実物大だからこそ伝わる生命感へのこだわり

 

──作品にはさまざまな木材が使われていますよね。こうした廃材はどのように集めているのでしょうか?

加治さん:

木材は、工務店や木製品をつくる工場から譲り受けています。解体材ではなく、新築工事で余った木材や、椅子や棚などを製作する際に出る端材が中心ですね。素材自体はきれいなんですが、使い道がなく捨てられる予定のものなので、そうした廃材を使って作品を制作しています。

企業でも端材を活かす取り組みはされていますが、それでも毎月多くの端材が出るため、そうした木材をいただいています。


──作品には木材そのものの色合いが活かされている印象ですが、塗装はほとんどされないのでしょうか?

加治さん:

はい。基本的には木材に塗装はしませんね。作品に色の濃淡を付けたい場合は、作品を組み立てたあとにバーナーで木材を焦がしています。色が付いている作品は、もともと塗装されていた外壁材などの端材を使っています。


塗装は手間もかかりますし、塗装をしてしまうと廃材だったことが分からなくなってしまうので、廃材を使う意味が薄れてしまうと思うんです。

というのも、廃材といっても新築工事で余った木材などなので、見た目はきれいな材料なんですよ。ホームセンターで買ってきた材料とほぼ変わらなくて、違いがあるとすれば、さまざまな形があってバラバラなことくらいです。


だからこそ、「それなら廃材でつくる意味は何なんだろう」と考えたときに、廃材をそのままの姿で活かすことに意味があると思うんです。


──なるほど。加治さんの作品は、本物の動物のような迫力がありますよね。どのような点を意識して動物を表現しているのでしょうか?

加治さん:

基本的には実物大を参考につくっています。猫は猫、大型犬は大型犬というように、図鑑などで実際の大きさを調べながら制作しています。


今回のワニの作品は、恐竜時代のワニがモチーフで、記録では全長約11メートルあったそうなので、その大きさを参考に制作しました。他の作品も実際の大きさを調べながら、実物大を基準に表現しています。


また、ポーズに違和感が出ないように、動物の骨格や動き、関節の可動域なども調べています。「こうやって走るんだ」「ここまで関節が動くんだ」といったことを理解した上で制作していますね。


──これまでさまざまな動物を制作されていますが、動物をモチーフに選ばれている理由を教えてください。

加治さん:

シンプルに動物が好きなんです。車や建物のような無機物も好きですが、動いているもののほうに興味があります。自分と同じ生き物として、惹かれる部分があるのかもしれません。

作品に木材を使うのも、そうした考えにつながっています。木ももともとは生きていた有機物なので、動物を表現する素材として親和性があると思っています。

 

△横浜「サマコン・フェス」展示作品と加治さん

△横浜「サマコン・フェス」展示作品を鑑賞する来場者

 

 

制作だけで終わらない。分解・搬入まで見据えた作品づくり

 

──作品は、どのような手順で制作されているのでしょうか?

加治さん:

まずは、制作する動物の骨格の写真や画像をインターネットで探して印刷します。そこから大きさに合わせて比率を計算しながら、手描きで寸法だけを書き出しています。


骨格をつくったあとは、その上に廃材を取り付けて形を整えていくという流れです。最後に必要に応じて、バーナーで木材を焼き、色の濃淡を付けています。


──さまざまな形の廃材が使われていますが、大きな作品だと、どのように組み合わせているのでしょうか?

加治さん:

大きな材料は、あらかじめ使いやすいよう適当に切っておきます。例えば、三角形などですね。その後、骨格ができた段階で、形の違う木材をパズルのように当てはめていきます。

少し削れば合うものは削って調整しながら、インパクトドライバーとビスで木材を固定していきます。


──完成した作品は、どのように会場まで運んでいるのでしょうか?

加治さん:

私の作品は屋内展示が中心なので、大型の作品は組み立てたままだと会場に入れないことが多いんです。そのため、一般的なドアを通れる大きさに収まるよう、最初から分解できる構造で制作しています。

例えば今回のワニの作品だと、首と上あご、下あごの3つのパーツに分けられるようになっています。


基本的には完成した作品を分解して、会場へ運びます。レンタル作品は展示会場で組み立てて、展示が終わったらトラックで回収しますね。さまざまな会場へ運べるよう、搬入しやすい構造にしています。


──加治さんのアトリエには、材料や大型作品を保管する倉庫があるそうですね。

加治さん:

はい。体育館くらいの広さの倉庫を借りています。2階に材料、1階には組み立てた作品を保管しているんです。

そこではオープンアトリエのような形で展示も行っていて、実際に作品を見てもらいながら、依頼者の方と打ち合わせをすることもあります。写真だけでは伝わらない作品の質感や大きさなどを見てもらえるのは良いですね。


△加治さんのアトリエに並ぶ大型作品たち


 

作品を「つくる」から「活かす」へ。企業との取り組みが広げる新たな可能性

 

──今後、加治さんが挑戦してみたい作品や目標があれば教えてください。

加治さん:

一度はゴジラをつくってみたいですね。いつか東宝公認の形で作品を制作できたらと思っています。

作品はアートとして鑑賞するだけでなく、ミュージックビデオのセットなど、さまざまな形で使ってもらえたら嬉しいですね。つくり方も特別なものではないので、「教えてほしい」と言われればお伝えします。


──企業との取り組みについては、どのように感じていますか?

加治さん:

企業さんとの仕事は、本当にありがたいですね。個人からのご依頼もありますが、今の規模の作品を制作するには、企業との取り組みがあってこそ挑戦できることも多いと感じています。

実際に、最初は小規模な展示から始まり、その後に作品をご購入いただき、さらに大きな制作依頼につながった企業もありました。そうやって継続的な関係が新しい仕事につながることも多いですね。


今後は、小型作品を受付などに設置し、定期的に作品を入れ替える年間契約型のレンタルも始められたらと考えています。


──印象に残っている企業案件はありますか?

加治さん:

『ACTA+』さんとの案件で、大分県の杉乃井ホテルでの作品制作は、印象に残っています。使われなくなったホテル棟に残されていた廃材だけを使うという条件だったので、事前に下見を行い、骨格を制作して現地へ持ち込み、仕上げました。


企業案件では、施設ごとの決まりや制約がありますが、その中で「こうやって制作すればいいんだ」という学びも多くありましたね。また、著名な施設で作品を制作した実績は、「ここで制作しているなら」という信頼にもつながり、次の仕事につながるきっかけにもなっています。



△杉乃井ホテル展示作品

 

──最後に、『ACTA+』へメッセージをお願いします。

加治さん:

『ACTA+』さんには、いつも丁寧に情報を共有していただき、いろいろと気にかけてもらっています。

企業とアーティストの間に入って、お互いの立場を理解しながら調整してくださるので、とても助かっています。情報が届くまでに多少時間がかかることはありますが、その分、こちらにとって受け取りやすい形で伝えてくださっているので、安心してやり取りができていますね。

これからも、さまざまな企業との仕事を一緒に進めていけたら嬉しいです。

 

 

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