大阪を拠点に活動するアーティストの吉田 琉平さんは、はんだごてやバーナーで木を焼き込み、鮮やかな色彩を描き重ねることで「命」と「夢」を同時に表現する独自の作品を生み出しています。
自然から得たインスピレーションや廃材を取り入れながら、『ACTA+』専属アーティストとして、無印良品との展示やドラマへの作品提供といった新たな挑戦も重ねてきました。
今回は、吉田さんがアートに目覚めたきっかけから、作品に込める思いや技法、今後の展望について伺いました。

制服姿でギャラリーへ。10代で芽生えたアートへの情熱
――まずは、簡単に自己紹介をお願いします。
吉田さん:
2001年生まれ、大阪府出身です。現在は大阪を拠点に、はんだごてやバーナーを使って木材を焼き込む作品を制作しています。
直近では、『ACTA+』さんの無印良品グランフロント大阪での展示に参加させていただきました。『ACTA+』さんとの出会いは、InstagramのDMがきっかけで、現在は『ACTA+』の企画に頻繁に参画しています。

instagramで紹介した吉田さんの作品制作の様子
――もともと、子どもの頃からアートに興味があったのでしょうか?
吉田さん:
はい、もともと絵を描くのは好きでしたね。高校2年生の頃、たまたまSNSで「アートの展示をやります」という告知を目にして、「あ、こんな世界があるんだ」と初めて知ったんです。それをきっかけに関西のギャラリーを巡るようになり、大阪や京都、兵庫など、放課後や休日の時間を使ってあちこち訪ね歩きました。
制服姿でギャラリーの扉を叩く高校生は珍しかったらしく、オーナーや作家の方々からは強く印象に残ったようです(笑)そこで出会う方々が、新たなギャラリーや展示の場所を教えてくださり、その情報を頼りに次々と足を運んでいましたね。
――青春時代にアート巡りを自分でしていたということは、本当に楽しかったんでしょうね。
吉田さん:
そうですね。アートを学ぶ環境に身を置いていたわけではなく、周囲に同じ関心を持つ人もいませんでした。だからこそ、自分でどんどん開拓していくっていうのが重要だという考えがあったのだと思います。やっぱり楽しくて、本当にいろいろな場所を回っていました。
――では、高校卒業後は、アートに関する進路に進んだのでしょうか?
吉田さん:
はい。ギャラリー巡りを通じて知ったデザイン専門学校に進学しました。そこでは広告や雑誌の表紙、ロゴをつくったりするイラストレーションやデザインを中心に学びました。今の作品づくりで用いている木材の加工はなく、IllustratorやPhotoshopといったデザインソフトを活用した制作や、デッサンの基礎を身につける授業がメインでしたね。
学内には展示ができるスペースがあったので、自分で企画を立ててクラスメイトを巻き込み、一緒に展示を行うこともよくやっていました。企画自体も好きで、面白さを感じながら実施していましたね。
焼いて描く」二重の表現。“命”と“夢”を共存させる技法
――吉田さんの作品は、木の温かみと鮮やかな色彩が両方あって、独特の雰囲気がありますよね。技法について教えていただけますか。
吉田さん:
私の作品は、木を「焼く」表現と、アクリル絵の具で色を重ねて「描く」という2つの表現を組み合わせて制作しています。「はんだごて」やバーナーで木を焼き込み、その「焼き色」を活かしながら、絵の具で人物やキャラクターのようなモチーフを描き加えています。
もともと最初の頃は、ペンを使って木製パネルに細かい細密画を描くことをしていました。画材屋さんで木製パネルを買い、使っていたんですが、ふと「木の素材そのものを活かしたら面白いのではないか?」と思ったんです。そんなとき、木を焼いて表現するはんだごての技法を使う作家さんを知り、取り入れてみたのがスタートでしたね。
はんだごては焼いている瞬間、熱の温かみや揺らぎや変化がとても面白いなと思い、使うようになりました。木が少しずつ焦げていく過程を見ていると、「生きているなぁ」という感覚に移り変わっていく感じがします。
――「焼く」という表現の魅力は、何でしょうか?
吉田さん:
火や熱に触れているとき、自分の中で強く「命」を感じるんです。生き物は熱がなければ活動できないですよね。氷点下でも生きていける生き物もいますが、結局は休眠状態でじっとしているだけです。でも、適温になると一気に動き出します。そう思うと、生命活動には熱が必要だと思うんです。
私にとって、「火や熱の存在=生きている存在」と感じるんですよね。そこは自分が生きているっていう存在や、毎日の中で感じた輝きを、熱を使って作品をつくりたいという思いがあって、熱に固執しています。
――吉田さんの作品は、絵の具の鮮やかさと、木を焼いた部分の焦げ色。その二面性が独特の魅力になっていますよね。
吉田さん:
はい。焼いている部分と絵の具の部分を分けている理由は、絵の具で描く部分が「二次元の存在」、つまり「空想」や「頭の中」の世界を表しているからです。一方で、木を焼いた部分は「命」や「生」をイメージしています。密接に感じる生命の存在を、火の焦げ色で生々しく表現したいという思いがあって。
二つの表現を重ねることで、「夢の存在」と「生きた存在」を作品で同時に表しているんです。
自然を尊び、人間の創造力を重ねる。反骨心から生まれる表現も
――普段の作品のインスピレーションは、どのように得ているのでしょうか。
吉田さん:
私は普段から小さなメモ帳を持ち歩いていて、そこに落書きのような「ドローイング」を描き続けています。日記のように、そのとき頭に浮かんだ線や形を描いておいて、後で作品をつくるときに見返すんです。「ああ、このときこういう存在を描いていたなぁ」と振り返りながら、そのストックを作品に活かすことも多いですね。
もうひとつは写真です。空や雲、光などの自然を撮影します。スマホの中は空の写真でいっぱいですね(笑)流れる雲がさまざまな形に変化するのは見ていて面白いです。私にとって自然は一番美しい存在で、この感覚を絵で表現できたら大きな満足につながると思っています。
こんなふうに、基本的には自然を尊重していますが、同時に「それだけではアートとは言えない」という思いもあります。
人間には想像力やものをつくる力があって、自然に手を加えることで新しいものが生まれる。自然に抗うというより、「人間ならではの力を見せてやりたい」というちょっとした反骨精神があるんです。そうした思いも、木を焼く作品づくりにつながっているのだと感じています。

ACTA+で販売する作品/『サイボーグウッドマン』(吉田琉平)
偶然の「これ使う?」から始まる、廃材との出会いが作品に
――作品づくりにおいて、素材の選び方はどのようにするのでしょうか。
吉田さん:
私の場合、製材された木材を購入することもあれば、日常の中で偶然手に入る廃材を使うこともあります。たとえば、近所で新しい家を建てていたときに、大工さんが余った木端材を「これ使う?」と声をかけてくれて、そのまま作品に使ったこともありますね。
そうした経験から、大工さんや職人さんが木材を余らせることが意外と多いのだと知りました。現場のダストボックスに廃材が入っているのを見つけて譲ってもらうこともありますし、散歩の途中で見つけて「これ、いただいてもいいですか?」とお願いすることもあります。
作品をつくるときの廃材選びは、単純に「この素材、面白いな」「使ってみたいな」という気持ちが一番大きいですね。廃材そのものの形を活かして作品に取り込むことが多いです。
――直近では『ACTA+』と無印良品グランフロント大阪の企画展にも参加されていましたよね。
吉田さん:
はい。あのときは『ACTA+』さんを通じて、無印良品さんから提供された段ボールやビニールテープ、プラスチックの小さな部品などを使って作品を制作しました。普段の制作では手に取らないような素材だったので、「こういうのも今度つくってみよう」と新しいアイデアの発見や刺激になりましたね。作品づくりの幅も広がり、いい体験になったと感じています。
現在も『ACTA+』さんから木材を提供していただいて進めているプロジェクトもそうですが、他者とのコラボレーションの面白さや、違う世界から刺激を得られます。そうした体験は、やっぱりアートの醍醐味だと思いますね。
サーモグラフィーで挑む新たな表現と『ACTA+』への期待
――最後に、これから取り組んでみたい表現や構想している作品があれば教えてください。
吉田さん:
これまでは木を焼いて焦げ跡をつけたり、絵の具を重ねて描いたりといった手法を中心に制作してきました。ただ、一度そこから少し離れて「熱」というテーマを違った形で表現してみたいと思っています。具体的には「サーモグラフィー」を使った作品を構想しています。
サーモグラフィーは、温度の違いを色で可視化する技術です。
私は「熱=命」というテーマに重ねて、「目には見えないけれど、確かにそこに生きて存在するもの」を表現できないかと考えています。サーモカメラを使って、熱の存在を表現する作品を構想中です。
デジタルな技術をあえて取り入れることで、これまでの「焼いて描く」というアナログな表現とは逆のアプローチを試してみたいなと思っています。
――今後の『ACTA+』との活動は、どのように感じていますか。
吉田さん:
『ACTA+』さんを通じて参加した無印良品グランフロント大阪での展示や、ドラマへの作品提供など、自分では経験できなかったことを数多く体験させてもらっています。これまでの活動はギャラリー展示が中心で、正直そうした依頼や企画に関わる機会はほとんどありませんでした。
だからこそ、『ACTA+』さんとのイベントはすべてが貴重な体験で、本当に感謝しています。これからも、面白いイベントや新しい企画に参加させていただきながら、良い関係を続けていけたらと思っています。